《 そして心が自由になった 》
僕は福島県の小さな街にあるゴミの焼却施設の職員でした
ずっと仕事がツラくて人間関係も最悪でした
もう自分の中で一杯一杯になっていました
そんな中あの東日本大震災がおきたのです
それまでにも僕の周りには問題ばかり起きていました
いつも喧嘩ばかりしていました
いつも僕の心はイライラしていました。いつも怒っていました
そんなある日すごい出来事があったんです
ずっと連休が続いていてゴミの収集が休みだったのでゴミがとても多かったのです
収集にいつもより時間がかかり夜遅くまで施設を開けておく必要がありました
受け入れの為に僕が残業で施設に残ることになりました
最後の収集車の受入れが終わり僕一人になったんです
僕は施設の戸締りをはじめました
施設は山の中にあるので周りには誰もいません
もう辺りは真っ暗です
施設も結構広いのでかなりの時間がかかります
すると突然僕の心の底から感謝の気持ちがわき上がってきました
そういえば・・・ここに勤めてもう20年も経つんだなぁ~~
本当に早いな~~~・・・
この施設と共に人生を歩んできたんだなぁ~
20年の長い間本当に色々なことがあったっけ
毎日、受付でお客に怒られたっけ
嫌な上司にずいぶんとイジメられたっけ
2011年3月11日の東日本大震災の出来事もあったけ・・・
永遠に続くかのような長い長い地震だったけ・・・
今まで忘れていた思い出が一気によみがえってきました
そして・・・・
それに関わった人々の顔が一気に思い出されました
僕の事を仕事のことで陥れた上司の顔も
まったく仕事をせずにいつも人目に隠れて昼寝をしていたふざけた上司の顔も
怒鳴り散らして僕に土下座をさせたお客の顔も
ものすごく施設が忙しい時に大変な仕事を僕にまかせて
自分はさっさと帰ってしまった上司の顔も
東日本大震災の次の日部下の僕たちには仕事に出勤させ
自分だけしっかり3日も休みを取り
自分の家の片付けをしていた上司の顔も
その人達のイヤな顔が一気に蘇って・・・
一気に僕の横をものすごいスピードで駆け抜け僕の後ろ側に去って行きました
そうか。そうだったんだ!
みんな僕が創っていたんだ・・!
僕のつらい人生のドラマは・・・僕自身が脚本を書いていたのか・・・
そうだったんだ・・・そうだったんだね!!
その瞬間すっと腑に落ちたのです
全部、僕が脚本を書いてキャストを決めて
みんなにお願いして演じて頂いていたんだ!
僕はずっとずーっと
自分が人生の被害者だと思っていました
でも本当は自分が監督だったんだって気がついたのです
そして僕は山の中の誰もいない施設の真ん中で
ドラマのワンシーンのように喉がかれるほどものすごい大声で叫んでいました
今まで泣いたこともなかった男が
少年のように顔をくしゃくしゃにしながら泣きながらわめいていました
大粒の涙が止めどなく溢れてきました
みんな~~~本当に今までありがとう~!
今まで最悪に見えていた人達は
僕がこのフィールドに立つために
嫌な役を買って出てくれたんだね~~!
僕は知らなかったよ!今まで本当に知らなかったよ~~~~!
僕はみんなのことずっと恨んでいたんです
今、初めて分かりました~~~!
僕の書いた脚本どおり最悪の人の役を完璧に演じてくださって
僕のために泣きながら鬼の面を付けて
最高の演技をして下さったんですね~~~~~!
みんなみんな本当にありがとうございました~!
20年間も続いた壮大なドラマの撮影がクランクアップを迎えたとき
オールキャストが一同に集まって
それまで付けていた般若の様な鬼の面を外して
満面の笑みで監督である僕の顔を見ている気がしました
僕はその時心が本当に自由になったのです!
心がふわっと軽くなりました
そしてすべてを許すことができたのです
本当にありがとうございます。感謝です!!